コーチからのアドバイスは邪魔なものと心得よ

こんにちは!

バドミントン情報を届けるブログ「バドミントン・アーカイブ」の管理人 スカラー(@badminton_crow)です。

アドバイスをしているとき、相手のリアクションを見ると「この人、自分のアドバイスを受け入れてくれていないな…」と感じることがあるのではないでしょうか。

「先生やコーチからのアドバイスはちゃんと聞けよ!!」と選手に言いたくなる気持ちもわかるし、「アドバイスを素直に受け入れる心を持ちましょう」みたいなことを言う人もいる。

こうした言論には一定の説得力があるし、ある一面から見た真理を言い当てているかもしれない。

しかしこうした言論には、「コーチからのアドバイスは邪魔なものである」という視点が決定的に欠落していることを見逃してはならない。

この視点が欠落しているせいで、多くのコーチが選手から主体性を奪ってしまっているのだが、困ったことにコーチ本人がそのことに無自覚である。あなたは大丈夫だろうか?

このページは、日本バドミントン協会 公認コーチ2の資格 を持っているわたしが、バドミントン界に蔓延する「アドバイス」について一石投じることを目的としている。

コーチのアドバイスは、時間泥棒である

Photo by Veri Ivanova on Unsplash

コーチのアドバイスが、選手にとってなぜ邪魔なのか?

その理由は「コーチのアドバイスが、選手をコントロールしようと強要しているから」であるとここでは答えたい。

大抵の場合、コーチから与えられるアドバイスはコーチの認識の枠組みにとらわれてしまっている。コーチが「こうするべきだ」という発想に基づいた声掛けしかできていない。しかし、それだと選手がコーチの器をこえて成長することなんてできるはずがない。

「経験が狭すぎる」というミルの指摘

そもそも、選手はコーチの器をこえていかなければならない存在だ。しかしコーチが自らの狭い経験だけに依拠してしまえば、選手の伸びしろは有限となってしまう。その先には、コーチのミニチュアが大量生産される未来しか待っていない。

古典的自由主義者や優れた経済学者としても知られる、イギリスの思想家 J.S.ミルは 著書『自由論』のなかで、以下のように述べている。

第一に、他のひとびとの経験は狭すぎるかもしれないし、間違って解釈されてきたかもしれない。第二に、彼らの解釈は彼らには適切でも、自分には不適かもしれない。…(中略)…第三に、その慣習が善い慣習であり、かつ自分にも適したものであっても、ただ単に慣習だからしたがうというのでは、人間のみに与えられた資質いずれについても、自分の内部で育成・発展させることができない。

引用元: J.S.ミル『自由論』(斉藤悦則訳)142頁、光文社古典新訳文庫、2012年。

この引用文の「慣習」を「アドバイス」と、「他のひとびと(彼ら)」を「コーチ」と、読みかえるとバドミントンでもまったく同じことが言えるだろう。

ミルは上の文章に続けて、自らさまざまなことを判断できるヤツじゃねえと、人間の洞察力は育たねーよ!!って吠えている(※実際のミルは、もっと穏やかで緻密で論理的に文章を組み立てています)。本当にそのとおりだとわたしは確信している。

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あなたの与えるアドバイスは、相手が問題意識を持っている内容とバッチリ一致しているか?

選手は有限である自分の時間を費やして、わざわざコーチのもとへアドバイスを求めに来ている。その時間は必ず有意義なものでなければならない。さもなくばただの時間泥棒である。

アドバイスの時間を有意義にするためには、どうすればよいか?

それでは、アドバイスの時間が有意義なものであるためには、どうすればよいだろうか?

ここでは2つの要素をあげておきたい。1つは「選手の主体性を損なわないようにすること」であり、もう1つは「ポイントを絞って簡潔にまとめること」である。

要素1: 選手の主体性を損なわないようにする

アドバイスの時間を有意義にするために、もっとも大切にしなければならないのは、選手の主体性を損なわないような声掛けをすることだ。言い換えると、選手が「やらされている」と感じるようなアドバイスを避けるべきだとも言える。

これはスポーツに限った話ではない。人間は自分の自由が失う可能性に対して、著しく反発を覚えるのだという(心理的リアクタンス)。

身近な例で言えば、親から「宿題をやりなさい!」と言われると、突如として宿題をやる気が失せてしまう。

「自分の行動を、自分で決めることができる」という自己決定感が、選手本人に生まれるようなアドバイスの仕方が大切である。

「アドバイスした内容をやるかやらないか、最終的に決めるのはあなたですよ( BYAF; But you are free. ) 」という旨の言葉をかけてあげよう。詳しい内容は、心理学や科学の研究論文を紹介している メンタリストDaigoさんの動画で確認することができる。

コーチのアドバイスは、たとえるなら情報を提供する軍師・参謀であり、最終的な判断をするのは皇帝である選手本人に委ねられる。あくまでも皇帝は選手であってコーチではない。

第一級の精神にふさわしい特徴は、その判断がすべて他人の世話にならず直接自分が下したものであるということである。

引用元:ショウペンハウエル『読書について』(斎藤忍随訳)18頁、岩波文庫、1960年。

自ら判断を下せるレベルの選手に対しては、コーチのアドバイスが「情報提供」であると心得るべきだ。 間違っても選手を自分の考え方にはめてコントロールしようと強要してはならない。

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情報提供とともに大切なのが、「問いかけ」だと近頃わたしは感じている。

選手の主体性を損ねないようにするためには、アドバイスを求められたときに「選手本人に話させる時間」を作っていくといいだろう。ある程度以上のレベルのプレーヤーであれば、問いかけを続けていくことで何をどう変えればいいか自分で気づくことができる。

結果的にたどり着くポイントが同じだったとしても、そこに至るまでの過程が重要だ。コーチから「こうしなさい」という言葉に言われるがままに従ってるだけのプレーヤーと、コーチが問いかけを繰り返すことで自分で気づいて主体的に取り組むプレーヤーとでは、定着の度合いも違うし、理解の深さも変わってくる。

先ほどのミルの言葉を再度引用しておく。何事も、やらされているだけではダメだということだ。

第三に、その慣習が善い慣習であり、かつ自分にも適したものであっても、ただ単に慣習だからしたがうというのでは、人間のみに与えられた資質いずれについても、自分の内部で育成・発展させることができない。

引用元: ミル『自由論』142頁。

日本、中国、韓国といった東アジアの国を見ていると、コーチが一方的に喋っているだけのことが多いけれど、他の地域を見てみると選手とコーチが対話をしている機会が多いことに気づく。

日本の選手でも、奥原希望選手などはコーチのアドバイスに対して自分からも何か言っている場面をしばしば目にする。選手本人が、コーチのアドバイスに対して「食い下がる」ような関係性が築けているほど、いい関係性といえるのかもしれない。

要素2: ポイントを1つか2つに絞り、1-2分でまとめる

アドバイスの時間を有意義にするために大切なことの2つ目は、「ポイントを1つか2つに絞ってまとめる」ことである。そしてポイントを1つずつ分けて明快に説明してあげよう。

人間はまだ一度にただ1つのことにしか、明瞭に考えられない動物である。文章作成にあたっては、まずこの事実に何よりも注意を払うべきであろう。だから一度に二つも三つものことまでも考えさせようというのは、人間に対して無理な要求である。

引用元:ショウペンハウエル『読書について』(斎藤忍随訳)112-113頁、岩波文庫、1960年。

試合後のアドバイスが4分も5分も長引く光景をよく目にするけれど、選手たちにはその半分ぐらいしか頭に残っていない。話が長くなればなるほど、何が大切なことなのか聞き手側は不明瞭になってしまう。

そもそも困ったことに、アドバイスを与える当の本人たち(コーチたち)が「何を話すべきなのか」について不明瞭なまま話していることも少なくない。そんな状態で、選手たちにとって明快なアドバイスができるはずがない。コーチたちも、短く要点を簡潔にまとめる訓練をしておくべきなのだ。

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特に、試合中のインターバルの時間に与えるアドバイスは、ポイントが絞られており、要点が簡潔にまとめられたものでなければならない。

インターバル時のアドバイスは、その後の戦局を左右する重要なものである。 にもかかわらず、実際に使える時間はゲーム間のインターバルで1分半、11点インターバルだと30秒ほどしかない(20秒前には選手がコートに入らなければならないため)。

先ほど引用したショウペンハウエルの言葉を胸に刻み、ポイントを絞って端的に伝えてあげよう。

結論:コーチのアドバイスは、最小限に

周りから見ると、熱のこもったアドバイスを長時間しているコーチほど熱心で良いコーチだと見られるかもしれない。そういうコーチも、動機としてはもちろん素晴らしいものを持っているのだろう。

しかし、選手の立場に立って考えてみれば、選手本人の主体性を尊重して、かつ短時間で端的に伝えてあげることもまた必要なことであろう。今回はそんなお話でした。短い時間のアドバイスであっても、熱意は伝わるものだ。

今回のまとめ

  • 多くの場合、コーチのアドバイスは時間泥棒である
  • アドバイスの時間を有意義にする方法は2つある
    1. 選手の主体性を損なわないようにすること(判断を委ねることと、問いかけることが重要)
    2. ポイントを1つか2つに絞り、1-2分でまとめること

それでは、今回はここまで。

わたしも資格を所有している 日本バドミントン協会公認コーチ について、詳しくはこちら↓↓

バドミントンの公認コーチ資格について、有資格者が解説する

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