日本バドミントン協会の「賞金の使い道」について調べてみた

バドミントンの賞金について、奥原希望さんのツイートが流れてきました。ニュースサイトとかにも載ってましたね。

わたしは今回の奥原さんのツイートに賛同したので、公開されている情報を元に「賞金額の使い道」について調べてみました。

一応、簿記2級を持ってるので「最低限は読めるかな〜」と思ってやってみましたが、この辺の専門職の人がいたらTwitterやコメ欄でツッコミとかよろしくおねがいします…!

結論だけ言うと、「少なくとも選手が納めた賞金の以上の金額を、強化や育成の費用に投じている」です。

協会の賞金の使い道を知る方法

財務諸表は公開されていないか?

PTAとか、地域のクラブチームとか、まともな団体であれば会計報告は毎年しているはずです。

ましてや日本バドミントン協会は「公益財団法人」だから、少なくとも税務署に対して会計報告の義務があります。

さすがに税務署に提出した財務諸表の公開ぐらいはしてるでしょ〜と思って探してみたところ、ちゃんと公開されてました。まともな団体でよかった。

現時点では 平成26-30年分の財務諸表が公開されており、平成31年(令和元年)分の財務諸表も、今年の6月ぐらいには公開されるでしょう。

参考 事業・財務状況公益財団法人日本バドミントン協会

早速、5年分の財務諸表を読んでみたので内容を見ていきましょう。 ちょっと難しいなーと思ったら流し読みしてもらって大丈夫です。

節末には簡単にわかるように「まとめ」を作っておきます。

まとめ:
こんな感じで要約します

財務諸表の中でどれが「賞金」なのか?

選手から納められた賞金は、日本バドミントン協会にとって「収益」です。

そこで「正味財産増減計算書(一般企業で言えば損益計算書)」にある 収益項目を調べてみました。しかし「賞金」に該当しそうなものが独立した勘定として作られていません。

「これじゃあ、選手が納めた賞金がいくらなのかわからないじゃん…」と諦めかけていましたが、財務諸表を最後まで読んでみるとそれらしきものを発見!

最後のページにある「財産目録」内の「未払金」項目に「ナショナルチーム選手他 競技用具補助費(獲得賞金の90%) 295,879,347」というのがありました。

これが「用器具補助費」として振り込まれることがわかります。

なんと、年度末の時点で選手の受け取る予定の獲得賞金があわせて 2億9,500万円 もある。「これだけのお金をいったん協会がプールしてるのか…」ということに驚きました。

これほど大きな金額が「正味財産増減計算書内訳表」のなかに「収益」として登場するのは1箇所しかない。「事業収益」の中の「競技力向上事業」です。

したがって、「正味財産増減計算書内訳表」に記載されている「事業収益」の中で「競技力向上事業」の項目に、選手の獲得した賞金が含まれている という風に、概ね考えることができるでしょう。

2018年の場合、選手への未払金(獲得賞金の90%相当額) が2億9,500万円であり、「競技力向上事業」の事業収益 が7億1,900万円であることから、選手が協会へ納めた金額は、3,200万円以上、7,190万円以下だということがわかります。

さて、選手が協会へ納めた 3,200万-7,190万円は、キチンと日本のバドミントン界のために使われているのでしょうか?? 今回はこの点について見ていきたいです。

ここまでのまとめ:
2018年度、選手が協会へ納めた金額は 3,200万円 ~ 7,190万円(推定)

何に使われているか?

平成26年(2014年)から平成30年(2018年)までの5年間にわたる財務報告をもとに、その推移を見てみます。

特に財務諸表の4ページにある「正味財産増減計算書内訳表」は、収支の内訳が目的によって以下のとおり分類されています。

  1. 普及指導事業
  2. 競技会運営事業
  3. 競技力向上事業

名前から推測するしかないけど、それぞれの項目はこんな内容に使われているのではないかと思います。

  1. 普及指導事業→「バドミントンの普及」「指導者向け講習」など
  2. 競技会運営事業→「大会の運営」など
  3. 競技力向上事業→「ナショナル選手の活動」など

財務諸表から読み取れる事実と、そこからの(わたしが推察した)ものとが含まれているので、その点は予めご承知おきください。

事業費

普及指導費
  • 2014年: 1億円
  • 2018年: 2億7,000万円

「バドミントンの普及に使うお金が、ここ5年で倍以上になってる」という事実だけ見ると、ちょっと嬉しいですね。

普及指導費は 2018年(平成30年)の計上が特に多くなってるので、この年から始まった「バドミントンキャラバン」で増えたのかなと予想。

育成認定費
  • 2014年: 2,500万円
  • 2018年: 6,400万円

約4,000万円増。「育成認定費」というからには、裾野を広げる活動の一部だと思うので素直に歓迎したいです。

加盟金

5年間、ほぼ変化なし。

たぶん、日本スポーツ協会とかの上部組織への加盟金ですね。

競技会事業費
  • 2014年: 1,500万円
  • 2018年: 4,000万円

「競技会運営事業」に計上されているので、ランキングサーキットとか、全日本総合とかの費用でしょうか。

「2018年だけ大会運営費が急に増えてるのはなぜ?」って考えてみましたが、この年から S/J リーグに「TOP4トーナメント」が導入されたのが一因かも。

そういえば、TOP4トーナメント導入初年度は会場がゼビオアリーナ仙台でしたよね。

国際事業費
  • 2014年: 2億1,000万円
  • 2018年: 3億6,800万円

ほとんどが「競技会運営事業」に計上されてるので、大会の運営費が増えてるってことになります。

2018年といえば 秋田マスターズがはじまった年なので、たぶんそこの費用じゃないかな。

国際大会派遣費
  • 2014年: 3,500万円
  • 2018年: 4,800万円

すべて「競技力向上事業」に計上されています。

ナショナルの選手を、たくさん海外へ派遣するようになったのでしょうか…?

競技力向上費
  • 2014年: 2億6,400万円
  • 2018年: 7億5,700万円

日本バドミントン協会の財務諸表を見ていて、2億円を超えるような経費は1つしかありません。

それは「選手への賞金の支払い」です。

ただし、7億5,700万円全額が賞金なのではなくて、ナショナルチームのオフィシャルサプライヤーであるYONEX製品の提供費用などもここに含まれているはずなので、そこだけは注意。

次世代ターゲット育成費
  • 2014年: なし
  • 2018年: 4,800万円

2014年の時点ではなかった項目です。

2015年に「ジュニア育成費」として新設されており、2018年の時点では「次世代ターゲット育成費」と名称を変えています。

2016-2018年の3年間で平均すると、毎年 5,000万円前後計上されています。

奥原さん! 5,000万ぐらいはジュニア育成に充てられるようになったみたいですよ!!(唐突な私信)

https://twitter.com/nozomi_o11/status/1261888417509462018
人件費
  • 2014年: 4,100万円
  • 2018年: 5,400万円

日本バドミントン協会という法人内部の人件費ではなくて、日本バドミントン協会の事業に関わっている人の人件費です。

  • 大会のスタッフ
  • 普及事業のスタッフ
  • 指導員資格取得のための講師
  • 国際大会に帯同するコーチやトレーナーさん

そういう人たちへの報酬に使われてるのかなと思います。理事の報酬とかは別で計上されているのでここには含まれてません。

退職給付費用
  • 2014年: 400万円
  • 2018年: なくなりました

どこかに統合されたのかも。

運営費
  • 2014年: 3,400万
  • 2018年: 6,000万

2018年の運営費 6,000万円の内訳を見ると以下のとおりになっています。

  • 普及指導事業の運営費: 1,600万円
  • 競技会運営事業の運営費: 1,300万円
  • 競技力向上事業の運営費: 3,000万円

「運営費」だけだとなんだかわかりづらいけど、施設の利用料などがこの項目に含まれているのではないかな(他に当てはまりそうな項目がないので)。

旅費
  • 2014年: 1,400万円
  • 2018年: 2,100万円

まあ概ね変化なし。

登録システム費用

「登録システム準備金」として2014年に700万円計上されており、2016年からは「登録システム運営費」として毎年1,400万円ほど計上されている。

わたしたちも日本バドミントン協会へ登録して日バカードが作られたり、日バの番号が割り振られたりしてるから、そのシステム運営とかに使ってるってことでしょう。

雑費
  • 2014年: 2,200万円
  • 2018年: 6,400万円

「雑費」ってごまかしに使いやすいので、ここが不自然に多いと税務調査でつつかれたりする。

とはいえ、冷静に内訳を見てみると「競技力向上事業」が増えた分がそのまま上乗せされているので、何か競技力向上事業に資することに使ったのでしょう。

それがなんなのかは日本バドミントン協会さんに聞いてみたいけれど。。

管理費編

ここからは管理費。いわば、日本バドミントン協会の内部でつかわれているお金です。

人件費
  • 2014年: 1,100万円
  • 2018年: 3,000万円

特に2018年にめっちゃ伸びてる。

使い道は役員、会計監査、評議員の報酬でしょう。役員(理事と監事)や、会計監査や、評議員が有償であることは日本バドミントン協会の定款にも明記されています。

(評議員の報酬等)
第14条

評議員に対して、各年度の総額が220万円を超えない範囲で、評議員会において別に定める報酬等の支給基準に従って算定した額を報酬等として支給することができる。

(役員及び会計監査人の報酬等)
第31条

理事及び監事に対しては、評議員会において別に定める総額の範囲内で、評議員会において別に定める報酬等の支給の基準に従って算定した額を報酬等として支給することができる。

2.会計監査人に対する報酬等は、監事の過半数の同意を得て、理事会において定める。

理事と監事はあわせて20名、評議員の数は正確にわからないけど定款では 50-60名 と定められています。

第11条
この法人には、評議員50名以上60名以内を置く。

理事と監事と評議員の人数が5年前とだいたい同じであれば、2014-2018年 の 5年間で報酬が 約3倍 になったということですね。

へえ〜〜〜。

退職給付費用
  • 2014年: 70万円
  • 2018年: なくなっている

少額なのでどこかに統合されたのかな。

運営費

ずっと 1,500万円ぐらい。

普及指導費
  • 2014年: 40万円
  • 2018年: 60万円

ほぼ変化なし。ちょっと増えた。

旅費
  • 2014年: 36万円
  • 2018年: 96万円

約2.5倍に。

なんだろう、急に理事か評議員で移動が増えた人がいるのかな。

交際費
  • 2014年: 100万円
  • 2018年: 150万円

私腹を肥やすだけの交際費じゃなくて日本のバドミントン界のための交際費なら、このぐらいの増額はまあいいんじゃないでしょうか。

雑費
  • 2014年: 170万
  • 2018年: 420万

雑費なので詳細な使途は不明。

まとめと私見

まとめと私見を述べ立てるコーナーです。

ここまでのまとめ

  • 普及指導費: 1億7,000万円アップ
  • 育成認定費: 3,900万円アップ
  • 国際大会派遣費: 1,300万円アップ
  • 次世代ターゲット育成費: 新設(4,800万円アップ)

普及、育成、強化に充てられる費用が、5年間で2億7,000万円アップしています。これはいいことですね〜

選手が協会へ納めている金額(3,200万円 – 7,190万円)よりも多いです。

重要ポイント:
普及や、育成や、強化の費用が、5年間で2億7,000万円アップしている

もっとダイレクトに行き渡らないのか

わたしは権力に対して懐疑的な人間なので、そもそも「いろんな組織が、いったん選手の賞金をプールしてる」ということ自体がちょっと気持ち悪いと思います。

日本バドミントン協会にそんな悪いことをする人がいるとか、そういう問題ではない。「選手の賞金をいろんな組織が一度預かる」という構造になっているのは健全じゃない気がする、ということを言いたい。

まず、賞金は世界バドミントン連盟から日本バドミントン協会に渡ります。

さらに、賞金は日本バドミントン協会から直接選手のもとに渡るわけでもありません。各都道府県のバドミントン協会に渡ります。

さらにさらに、各都道府県のバドミントン協会から直接選手のもとに渡るわけでもありません。各選手の所属先に渡ります。

さらにさらにさらに、選手の所属先がその賞金をキチンと渡すかどうかはまた別の問題です。

アクトン卿の言葉を借りるまでもなく、これだけ間に多くの組織が入っていると途中で絶対「中抜きしよう」って考える人が出てくるのは目に見えています。

それが本人の同意の上ならいいんだけど、これから多くのバドミントンプレーヤーが「プロ」になろうと思ったら、中抜きされまくりの下流でお金が降ってくるのを待ってる現行の構造はぶっちゃけ微妙じゃないかなって思います。

いったん協会から選手本人が全額預かって、その上で選手からお世話になった人たちに然るべき金額を支払う…という形の方がよっぽど健全なんじゃないかな。

※2020/05/20 追記: いまは賞金の渡し方が少し変わったみたいです。奈良岡さん、ありがとうございました(^^)

以上、公開されている日本バドミントン協会の財務諸表をもとに、賞金の使い道をなんとか探ってみました(+少しだけ私見を述べました)。

わたしのように、公開情報から一応読み取ることができる人もいるでしょう。

しかし、今回お伝えした内容は、正直なところ有資格者じゃないとなかなかわからない内容です。特にバドミントンに専念している選手ならなおさら難しいでしょう。

また有資格者であったとしても、公開情報をもとにしただけでは大雑把な使い道しかわかりません。たとえば「賞金が上がった分、トレーナーさんの報酬を○○%上げることにしました」という情報はわからず、ただトータルとして「人件費が○○%上がった」としかわからない。

そういう意味で言えば、「公開されてる財務諸表を見てください」じゃなくて、協会から選手への説明がやっぱり必要だよなって思いました。

賞金を納める意義が、キチンと選手に伝わるようにしてあげてほしいですね。

現行のルールというのは自明のものではありません。ルールがつくられたときに想定されていた時代背景と、いまわたしたちが置かれている現実とは、ずいぶんとかけ離れてしまいました。

必要性が感じられるようであれば、ルールを見直す時期なのかもしれません。

4 COMMENTS

アバター 坂本聖二

丁寧に調査されてますね。
素晴らしい❗️
これなら、おおよその賞金上納金の使途は把握できますね。
僕はこのシステムを当初から大体把握していたので、フェイスブックにもヒントらしき投稿をしたんですよ。

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スカラー スカラー

>坂本さん
ありがとうございます!
大枠ではわかるなあ…という感じでした。
一般的な「決算報告」と同じで、財務的に健全であるかどうかはわかっても、詳細な使途まではわからないです。
なので、賞金をおさめている選手に向けては個別に説明あってもいいんじゃないかなと思っています。

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アバター 永田良成

#スカラー様 解り易くご努力頂き 有難うございました。深く感謝します。

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スカラー スカラー

>永田さん
そう言ってくださってありがとうございました!
調べてよかったです(*^^*)

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