練習を休んでうまくなる!バドミントンでも応用可能なレミニセンス現象とは

こんにちは!

バドミントン情報を届けるブログ「バドミントン・アーカイブ」の管理人スカラー(@badminton_crow)です。

一般的に「バドミントンを強くなるためには、休まず練習すべきだ」と考えられがちである。

しかしわたしは、適度な休養、適度なオフをとることが必要だと考えている。このことはトッププレイヤーを目指している人も同じく当てはまる。

それはなぜなのか?学習心理学から「レミニセンス現象」などを援用しつつ、バドミントンにおいて休養が必要な理由について説明してみよう。

練習を休んでいた方がうまくなった?

わたしの15年近くのバドミントン人生のなかで「練習を休んでいた方がうまくなった」という経験が何度かあった。

たとえば中高生のころは、テスト期間中になると1-2週間ほど練習が休みとなる。テスト期間が終わった頃に練習を再開すると、大抵はうまく打てないもの。ひどいときは空振りすることもあるw

しかし、ごくたまに「テスト期間中まったく練習してなかったのに、今までで一番うまく打てる」ということがおこる。

中高生時代に、ある程度以上のレベルでバドミントンをやっていた人なら、経験があるんじゃないだろうか。

バドミントン以外でも同じことを経験している。大学生のとき、ゲームセンターにおいてある「REFLEC BEAT」という音楽ゲームにのめり込んでいた時期があった。

※↑自分のプレー動画ではありません

ろくに大学の講義にも出席せず、ひたすらゲームセンターにこもって1ヶ月に数万円も費やしていた。それにもかかわらず、この音楽ゲームでも「伸び悩み」の時期がやってくる。

伸び悩んでおもしろくなくなったから放置して、数か月後にやってみると、自己ベストをあっさり更新。難しくて苦しんでいた箇所が驚くほど簡単に見えてきて、自然と指が動く。そんな経験をしたことがある。

以上のように「練習をしていないのに、なぜか今までで一番うまくできた」という経験を何度かしているし、他の人からも似たような話を聞いたことがある。こうした現象をどういう風に説明することができるだろうか?以下ではいくつかの理論などを援用しながら説明を試みたいと思う。

いろいろな角度から説明

「見つめる鍋は煮えない」

文学者でもあり、優れた古典研究者でもある外山滋比古さんは、著書『思考の整理学』において同様の指摘をしている。

よく、”朝から晩まで、ずっと考え続けた” というようなことを言う人がある。いかにもよく考えたようだが、その実は、すっきりした見方ができなくなってしまっていることが多い。こだわりができる。大局を見失って、枝葉に走って混乱することになりかねない。

前にも引き合いに出したが、外国に

”見つめる鍋は煮えない”

ということわざがある。早く煮えないか、早く煮えないか、とたえずナベのフタをとっていては、いつまでたっても煮えない。あまり注意しすぎては、かえって、結果がよろしくない。しばらくは放っておく時間が必要だということを教えたものである。

考えるときも同じことが言えそうだ。あまり考えつめては、問題のほうがひっこんでしまう。出るべき芽も出られない。一晩寝てからだと、ナベの中はほどよく煮えているというのであろう。

引用元:外山滋比古『思考の整理学』38-39頁、ちくま文庫、1986年。(※太字加工は引用者による)

「見つめる鍋は煮えない」という言葉を引用した外山さんの説明は、バドミントンでも同じように当てはまりそうだ。

休養がないということは、摂取した情報を消化するヒマがないということである。つまり脳が「情報の供給過多」となっている状態だ。お腹いっぱいなのに、口の中に食べ物を詰め込まれたら拒絶反応を起こす。それと同じこと。

Photo by Robin Stickel on Unsplash

やるべきことをやったら、少しのあいだ離れている方がいい。意識を別のことに向けておいたほうがいい。

食べものにたとえるなら、摂取したものを「消化」する時間が必要だということ。練習をしていないときの方がうまくなったような気がするのは、いままで摂取(インプット)してきた情報を整理して消化することができたからだ…と考えることができる。

高校時代にバドミントンを指導してくださった先生は「練習を重ねていれば、ある日突然できるようになる瞬間がある」という旨のことをしばしば口にしていた。これもやはり同じことを言っているのだろう。

毎日バドミントンの練習をして、朝から晩までバドミントンのことばかり考えている。そういう人って周りから褒められるタイプだけど、実は「鍋をずーっと見つめている」人なのかもしれない。

※余談だけど、エッセイ、卒論、ブログなど少しでも「知的生産」と向き合うのであれば 外山滋比古『思考の整理学』か、梅棹忠夫『知的生産の技術』か、どちらかは必ず読んでおきたいところだ。

レミニセンス現象と分散学習

「練習を休むと上達する」現象を、違った側面(学習心理学)から説明してみよう。

スポーツに関する心理学の本を読んでみると「いかにして学習はおこるか(上達のメカニズム)」は必ずと言っていいほど遭遇するテーマである。

そのなかでおもしろいトピックスにいくつも遭遇するんだけど、そのうちの1つに「反応性抑制」というものがある。

【定義】反応性抑制とは、有機体がある反応をするたびに蓄積するある量の特殊な疲労である。

引用元:フランク・J・ブルノー『実例心理学事典』(安田一郎訳)203頁、青土社、1996年。

…これだけを読んでも意味がわからないと思うので、同じ本のページから実例を引用してみよう。

【実例】マールがタイピストになるために練習しているとしよう。彼は休憩時間なしに一列を5回試みた。1分あたりの単語の得点は、26、31、33、34、33だった。15分中断してから6回目の試行をした。その得点は37で、彼がこれまでに得た最高の得点だった。

引用元:フランク・J・ブルノー『実例心理学事典』(安田一郎訳)203頁、青土社、1996年。

「反応性抑制」を自分なりに噛み砕いて説明してみると「同じことばかりをやり続けていると脳が無意識に疲弊し、あるいは抵抗し、注意力が散漫になる」のである。その結果、パフォーマンスが落ちる。

Photo by Christian Erfurt on Unsplash

学習心理学の側面から見ると、反応性抑制をリセットするために、インターバル(休憩)が 必要となるのである…とでも言うことができるだろう。

また、インターバルを挟んだ直後に成績が向上する現象は「レミニセンス」と呼ばれるそうだ。

休憩時間後の成績のスパート(力走)はレミニッセンス reminiscence と呼ばれる

引用元:フランク・J・ブルノー『実例心理学事典』(安田一郎訳)203頁、青土社、1996年。

分野を問わず「同じことでも、気分転換したあとのほうがうまくいく」という経験がある人は多いはず。要するにアレのこと。

これをバドミントンに当てはめてみると、「少しだけバドミントンから離れたときのほうが、うまくいく」ということだ。「テスト期間が終わった直後が一番うまくできた」という冒頭の例などは、まさにこのレミニセンス現象であるといえるだろう。

毎日のようにバドミントンをやっている人ほど、バドミントンに対する興味や新鮮さや集中力が欠けてきてしまうのではないだろうか。そうするとモチベーションも下降気味となり、結果的にはパフォーマンスの低下につながってしまいかねない。適度な休憩こそ、パフォーマンスを高いレベルで維持する秘訣なのだ。

もちろん「練習をしていないときの方がうまくいく」からといって、練習をサボっていいということにはならないことには注意してほしい。練習していない方がうまくいったのは、過去の自分が大量のインプットを行ってきたからであって、インプットの貯金がなくなれば、未来の自分の競技レベルが衰えていく。これは当然だ。適度なリフレッシュ後には、再度インプットを繰り返してほしい(練習あるのみ)。

敢えて離れてみる

Photo by John Torcasio on Unsplash

スポーツ先進国のアメリカにおいては、トップアスリートですらアマチュア時代に2つや3つのスポーツを掛け持ちするのが当たり前…というのはよく聞く話。

参考 野球とアメフトの二刀流を生む、アメリカにおける部活動のあり方を考えるBASEBALL KING

日本においても、同様のスタイルの選手が出てきている。

超逸材のユーティリティプレーヤーとして甲子園を沸かせた中日ドラゴンズの根尾昂選手などは、中学生まで「夏場は野球、冬場はスキー」というスタイルだったんだとか。大阪桐蔭高校時代の彼のプレーは、すでに高校生離れしていた。

参考 大阪桐蔭・根尾昂は野球の常識の外。片手捕球、ジャンプスロー、スキー。Number Web

脳を信じよう

「バドミントン強くなりたいから、四六時中バドミントンのことばっかり考える」という態度は、一見すると褒められがちである。

しかし、こうした態度は学習心理学的には必ずしもいいことじゃないと言える。バドミントンから離れて反応性抑制を取り除きつつ、脳が情報を整理するための時間を作ってあげなければならない。

Photo by Josh Riemer on Unsplash

休養(インターバル)がないとレミニセンス現象はおこらない。

週に1回のオフすらない場合、情報のインプットが過剰になっている危険性があると言える。

練習が休みの日は家でゴロゴロしてるぐらいがちょうどいい。せめてバドミントン以外のことをやって、バドミントンのことから頭を切り替える時間を作ってほしい。適度な休養をとることで、レミニセンス現象を意図的におこしてほしいのだ。

少なくとも「学習心理学」の領域からは、そういう指摘ができる…というお話でした。

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